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灯台守の航海日誌

永遠に続く困難を「祭り」と呼べ - MONZO『末法万年尽未来祭』が鳴らす、魂の祝祭ビート

導入

この苦しみは、いつまで続くのだろうか。未来へ向けて視線を上げようとしても、分厚い雲に覆われているように感じる。そんな、出口の見えない日々に沈み込みそうになった時、あなたならどんな音楽を求めるだろうか。静かな癒しか、あるいは、すべてを吹き飛ばすほどの祝祭か。

MONZOの楽曲『末法万年尽未来祭』は、後者の、最も過激で、最も優しい形の一つだ。この曲は、未来への悲観論に対して「その通り、困難は永遠に続くかもしれない。だから、いっそ“祭り”にしてしまおう」と、大胆な視点の転換を提案する。これは単なる楽曲ではない。終わらない日常を、無限の祭りに変えるための、力強い祝詞(のりと)なのである。

楽曲が描く「終わらない祭り」という名の希望

この楽曲の核心は、そのタイトルに込められた、鮮やかな言葉の錬金術にある。仏法における、救いがたい末の世が永遠に続くことを示す「末法万年尽未来際(まっぽうまんねんじんみらいさい)」。その絶望的な響きを持つ言葉の最後の一文字を、本作は「際(きわ)」から「祭(まつり)」へと、軽やかに置き換えてみせる。

この一文字の転換こそ、MONZOが私たちに送る力強いエールだ。「辛い世はこれからも永遠に続くかもしれないが、それを祭りと捉えて喜び勇んで楽しみながら生きていこうよ」。本作は、このコンセプトを基軸に、安直な答えを提示することなく、「自分を開拓し続ける先にのみ本当の答えがある」という、誠実なメッセージを投げかける。

楽曲情報

  • タイトル: 末法万年尽未来祭
  • アーティスト: MONZO
  • リリース年: 2025年
  • ジャンル: J-POP

サウンドが紡ぐ、パステルカラーの宇宙船

この楽曲の鑑賞体験は、そのサウンドの探求から始まる。まず、リスナーの耳を捉えるのは、音色の圧倒的な豊かさだ。イントロは、多様なシンセサイザーが重なり合い、まるで宇宙船が飛び立つかのような壮大な音像を描き出す。そのサウンドは、80年代ディスコ音楽を彷彿とさせる電子音を基調としながら、曲の終わりに向かって何度もワープを繰り返すかのように加速していく。

この緻密に設計された電子音のレイヤーに対し、驚くほど人間的な温かみを加えているのが、「ヨイショ!」「ズッキュン!」といった合いの手の声だ。重くなりかねない歌詞の世界観を、クスリと笑えるほどの軽やかさで支えるこの声は、まるで祭りの神輿を共に担いでくれているかのよう。楽曲のイメージカラーであるパステルピンクとパステルイエローが、このキラキラした電子音と人間的な声の間に広がる、優しくも力強い世界観を象徴している。

その祝祭感を支えるのが、リズムとハーモニーだ。BPMの速い、シンプルで力強い4つ打ちのダンスビートは、聴く者の身体を自然と揺らし、「ジョギングにも合いそう」と感じさせるほどの、前へ前へと進む推進力を生み出す。基本的に明るいコードで構成されたハーモニーは、この楽曲が持つ揺るぎない肯定性を音楽的に裏付けている。

そして、その上で踊るメロディは、どこまでも明るくキャッチーだ。特に、何度も繰り返されるサビは、一度聴けば誰もが口ずさめるほどの親しみやすさを持つ。この覚えやすいメロディこそが、「末法万年尽未来祭」という難解な言葉を、私たち自身の応援歌として心に刻み込むための、最も効果的な装置として機能している。

突き抜けた明るさが、涙を誘う

この楽曲がもたらす感情体験は、一筋縄ではいかない。第一印象は、とにかく「楽しい」。しかし、その祝祭的なサウンドの上で歌われる歌詞は、「希望が無いとね、生きていけないけど、だけど」「絶望しててもね、認識だけでもね、生きていけないから」と、人生の困難さを決して否定しない。

この「突き抜けた明るさ」と「渋すぎる歌詞」のコントラストこそが、この楽曲の真骨頂だ。私たちは、そのあまりのポジティブさに、抱えていた悩みがどうでもよくなるようなお祭り気分を味わうと同時に、その根底にある深い優しさに触れ、少し泣きそうになる。それは、悲しみの涙ではない。困難な現実を直視し、それでもなお「祭りにしよう」と笑う、その強さと優しさに対する、感動の涙なのだ。

この楽曲が教えてくれる、転換の力

『末法万年尽未来祭』の核心的価値は、その「視点の転換力」にある。この曲は、困難を消し去ろうとはしない。ただ、その呼び名を変え、向き合い方を変える。それだけで、絶望的な「際」は、希望に満ちた「祭」へと姿を変えるのだ。

楽曲がループ構造を意識して作られている点も、このテーマを補強する。曲の終わりは次の始まりへと繋がり、祭りは永遠に続いていく。それは、「自分を開拓し続ける」という、終わりのない、しかし喜びに満ちた営みのメタファーでもある。

あなただけの「尽未来祭」を始めよう

もし、あなたが今、終わりの見えないトンネルの中にいると感じるなら、ぜひこの3分間の祭りに参加してみてほしい。ヘッドホンをつけ、再生ボタンを押す。それは、あなただけの「末法万年尽未来祭」の始まりの合図だ。

この曲は、魔法のように苦しみを消してくれるわけではない。しかし、その苦しみと共に踊り、それを乗り越えるためのビートを、あなたの心に確かに刻んでくれるだろう。

あなたの魂を、祭りの中心へ

灯台守(MASATAKA)のプロフィール写真

この記事の著者

灯台守

(執筆・監修:MASATAKA)

大創社 コンテンツディレクター / AI共創ストラテジスト

20年以上のWeb開発・翻訳経験を持ち、言葉とテクノロジーの両方を扱う創造的な専門家。翻訳家(2003-)として『孫正義名語録 情熱篇』などを手掛け、2013年に大創社を創業。

「評価」ではなく「鑑賞」を軸とした独自の組織開発手法の開発者(特願取得済)。心理的安全性と創造性を育む「学習鑑賞ポートフォリオ」を通じて、教育機関・企業の変革を支援。

現在はAI共創戦略により、書籍9言語同時展開を実現。日々の思索と対話を通じて、世界に眠る可能性を探求し続けています。

鑑賞ポートフォリオ AI活用戦略 組織開発 教育工学 多言語翻訳

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