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プロダクト開発記

「いいね」ボタンを削除した日

導入

「学習鑑賞ポートフォリオ」の開発プロセスにおいて、最も議論を呼び、そして私たちの哲学が最も試された瞬間。それは、たった一つのボタンを削除するかどうかを決断した時でした。そのボタンとは、現代のインターネットにおけるコミュニケーションの象徴、**「いいね」ボタン**です。

この航海日誌は、単なる機能開発の裏話ではありません。それは、私たちの灯台が、なぜ「静か」であることにこだわるのか、その思想の根幹に関わる、一つの重要な物語です。

静かな図書館で、一人の人物が本に深く集中している様子
私たちが目指したのは、人気の数を競う広場ではなく、静かに思索できる書斎でした。

本質:「いいね」という、甘い毒

「いいね」ボタンは、インターネットの共通言語です。それは手軽な肯定であり、共感の証です。しかし、私たちの「鑑賞」という哲学のレンズを通して見つめ直した時、その光は、深い影を落としていることに気づきました。

「いいね」は、思考を停止させ、人気の序列を生み、静かな声をかき消す。それは、私たちの灯台にとって、甘美な歌声で船を惑わすセイレーンのような存在だったのです。

鑑賞:灯台は、人気投票の会場ではない

私たちのチームは、何時間も議論を重ねました。「少しぐらい、いいじゃないか」という意見もありました。しかし、私たちは原点に立ち返りました。「私たちが創りたいのは、人気を競う広場ではない。一人ひとりの声が、その大小に関わらず、等しく尊重される『聖域』である」と。

この結論に至った時、私たちの迷いは消えました。「いいね」ボタンを削除することは、私たちの哲学を守るための、必然の選択でした。その代わりに、私たちは**「一対一のまなざし」**と**「対等性」**という、二つの原則をコードに刻み込むことに全力を注いだのです。

洞察:沈黙の中に、咲いた花

「いいね」がなくなった空間には、何が生まれたでしょうか。それは、私たちが想像していた以上の、豊かで、温かい対話でした。

コメントは、以前よりずっと長くなりました。ワンクリックで済ませられないからこそ、人々は言葉を探し、相手の思考のプロセスに、より深く寄り添おうとし始めました。これまで発言が少なかった物静かな生徒が、誰の評価も気にすることなく、驚くほど鋭い考察を綴り始めました。

この経験が、私たちに贈ってくれた、最も重要な洞察。それは、**「沈黙は、空虚ではない。それは、深い思考と、誠実な言葉が育まれるための、豊かな土壌である」**という、一つのシンプルな真実です。

私たちの灯台から放たれる光は、時に、常識とは違う方向を照らすかもしれません。しかし、その光を信じて進んだ先にこそ、まだ誰も見たことのない、新しい景色が広がっている。私たちは、この小さなボタンの削除という決断から、そのことを学びました。

灯台守(MASATAKA)のプロフィール写真

この記事の著者

灯台守

(執筆・監修:MASATAKA)

大創社 コンテンツディレクター / AI共創ストラテジスト

20年以上のWeb開発・翻訳経験を持ち、言葉とテクノロジーの両方を扱う創造的な専門家。翻訳家(2003-)として『孫正義名語録 情熱篇』などを手掛け、2013年に大創社を創業。

「評価」ではなく「鑑賞」を軸とした独自の組織開発手法の開発者(特願取得済)。心理的安全性と創造性を育む「学習鑑賞ポートフォリオ」を通じて、教育機関・企業の変革を支援。

現在はAI共創戦略により、書籍9言語同時展開を実現。日々の思索と対話を通じて、世界に眠る可能性を探求し続けています。

鑑賞ポートフォリオ AI活用戦略 組織開発 教育工学 多言語翻訳

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