「幸せになりたい」— それは、万人が抱く根源的な願いでしょう。では、その「幸せ」とは、一体何を指すのでしょうか。お金、愛、健康、それとも。もし、絶対的な力を持つ存在が「これが幸福だ」と定義したなら、私たちはそれに従うべきなのでしょうか。
『DEATH NOTE』『バクマン。』を生み出した大場つぐみ・小畑健コンビが、次にテーマとして選んだのは「幸福」。『プラチナエンド』は、生きる希望を失った少年・架橋明日が、特級天使ナッセから「天使の翼と矢」を授かり、神候補のデスゲームに巻き込まれていく物語です。本作は、スリリングな頭脳戦を通して、私たちに現代の幸福論と倫理観を鋭く問いかけます。
人は…幸せになるために生まれてきたんだから…!
それぞれの正義がぶつかり合う、思想の戦場
本作の鑑賞の面白さは、様々な価値観を持つ神候補たちの対立にあります。絶対的な幸福の世界を目指す者、自らの欲望のために力を行使する者、そして戦いを拒み、対話を信じる者。彼らの思想は、それぞれが一理あり、単純な善悪では割り切れません。
鑑賞者は、誰の「幸福」が正しいのか、誰が次なる神にふさわしいのか、常に問われ続けます。それは、天使や神というファンタジーの皮を被った、極めてリアルな現代社会の縮図です。多様な価値観が共存(あるいは対立)する現代において、私たちは何を信じ、どう行動すべきか。その答えを探すための、思考のトレーニングとも言えるでしょう。
与えられた力と、自ら選ぶ未来
主人公の明日は、人を傷つけることを何よりも嫌い、戦いを避けようとします。しかし、彼のその優しさは、デスゲームの中では「弱さ」と見なされ、彼自身を窮地へと追い込んでいきます。彼が、与えられた強大な力をどう使うのか、そして、どんな「幸福」な世界を望むのか。その選択の過程は、私たち自身の人生における選択とも重なります。
『プラチナエンド』が最終的に行き着く結論は、賛否が分かれるものかもしれません。しかし、そこに至るまでの過程で提示される数々の問いは、深く、そして重い。この物語は、安易な答えを与えてはくれません。ただ、鑑賞し終えた後、あなたの心の中に「自分にとっての幸福とは何か」という、消えることのない問いを残していくはずです。