「オシャレは自分のためにするものだ」と、よく言われます。もちろん、それは真実でしょう。しかし、もし「好きな誰かのために変わりたい」と願う気持ちが、自分を磨く原動力になるのなら、それもまた、同じくらい尊いことではないでしょうか。
『翼くんはあかぬけたいのに』は、ファッションに無頓着な主人公・翼くんが、憧れのギャル・天野さんの隣にふさわしい男になるため、オシャレ猛勉強に励むラブコメディです。本作は、ファッション初心者向けの教科書として役立つだけでなく、恋する人のために一生懸命になることの愛おしさと、その努力を見守り、応援してくれる存在の温かさを、私たちに教えてくれます。
変わりたいって思う気持ちが、一番のオシャレなのかもね。
試行錯誤の過程こそが、自分を作る
本作の鑑賞の魅力は、翼くんがファッションの知識を一つ一つ学び、失敗を繰り返しながらも、少しずつ成長していく過程そのものにあります。サイズ感、色合わせ、TPO。彼がぶつかる壁は、多くの人が一度は経験したことのある、リアルな悩みばかりです。だからこそ、読者は彼の挑戦を、まるで自分のことのように応援したくなるのです。
そして、そんな彼の不器用な努力を、天野さんが決して馬鹿にせず、優しく見守ってくれる関係性が、この物語を何倍も魅力的にしています。誰かが見ていてくれる。その安心感が、人が一歩前に踏み出すための、最大の勇気になることを、本作は優しく描き出します。
「好き」がくれる、変わるための勇気
自分を変えることは、簡単なことではありません。時には周りから笑われたり、自分自身で「似合わない」と諦めてしまったりすることもあるでしょう。しかし、翼くんは「天野さんの隣にいたい」という強い想いを原動力に、挑戦を続けます。
この物語は、ファッションというテーマを通して、私たちに「好き」という感情が持つ、計り知れないパワーを思い出させてくれます。誰かのために変わりたいと願う、その純粋な気持ち。それこそが、自分自身の殻を破り、新しい世界への扉を開く、最も強力な鍵なのかもしれません。読めばきっと、少しだけオシャレをして、誰かに会いに行きたくなる。そんな爽やかで心温まる一作です。