正義の反対は、本当に「悪」なのでしょうか。もし、法で裁けぬ巨悪を断罪するために、自らが「悪」となることを選んだ男がいたとしたら。あなたはその男を、断罪することができますか?『憂国のモリアーティ』は、かの有名なシャーロック・ホームズの宿敵を主人公に据え、私たちに「正義」のあり方を問い直す、スリリングな物語です。
彼のやり方は決して許されるものではありませんが、その根底にある強い正義と覚悟には、不思議な説得力があります。
「鑑賞」する、犯罪卿の美学
本作の魅力は、主人公ウィリアム・ジェームズ・モリアーティが、その天才的な頭脳で、腐敗した貴族たちを断罪していく、その完璧な犯罪計画にあります。私たちは、彼が仕掛ける、まるで芸術品のような犯罪のプロセスと、その裏にある、社会を憂う強い想いを「鑑賞」します。それは、単なる復讐劇ではなく、歪んだ社会構造そのものを変えようとする、彼の悲壮な覚悟の物語なのです。
なぜ今、私たちは「アンチヒーロー」に惹かれるのか
単純な善悪二元論では割り切れない、複雑な現代社会。そんな時代だからこそ、私たちは、正義の側にいながらも、時に無力さを感じるのかもしれません。モリアーティというアンチヒーローは、そんな私たちの鬱屈した感情を、ある種、代弁してくれる存在です。彼のやり方は許されない。しかし、その行動の根底にある、社会を良くしたいという純粋な願いに、私たちは、どこか共感し、惹きつけられてしまうのです。