「生徒一人ひとりの内面的な成長を、どうやって客観的に捉え、評価すればいいのだろう?」これは、中学校で道徳科を担当する多くの先生方が抱える、切実な悩みではないでしょうか。私たちは、その困難な課題に正面から向き合いました。
本書は、抽象的な理念を語るのではありません。評価が難しいとされる中学校道徳科の現場で「学習鑑賞ポートフォリオ」を実践し、その驚くべき有用性を明らかにした、具体的なレポートです。
『学習鑑賞ポートフォリオを用いる学習評価の特徴と課題 : 特別の教科 道徳を中心に』
中学校道徳科の評価課題に対する、実践的な解決策
なぜ、私たちは「中学校道徳科」の実践を問うたのか
先行研究では、主に小学校社会科で「学習鑑賞ポートフォリオ」の有効性が示されてきました。しかし、私たちは、より評価が複雑で困難とされる「中学校道徳科」という文脈でこそ、このアプローチの真価が問われると考えました。
思春期の多感な生徒たちの、数値化できない心の動き。それを「評価」という形で記述することの難しさ。本書は、その難題に挑んだ実践の記録であり、道徳科の評価に悩むすべての先生方への、具体的な処方箋となることを目指しています。
評価の目的は、生徒をランク付けすることではありません。生徒自身が自らの成長を実感し、次の一歩を踏み出すための、温かいフィードバックであるべきです。本書は、その理念を道徳科で実現するための方法論です。
評価文の「材料集め」から解放される
本書が提唱する「学習鑑賞ポートフォリオ」は、単なる作品ファイルではありません。生徒が自分の考えを記述し、仲間の意見を「鑑賞」し、コメントを送り合う、一連のプロセスそのものです。
このプロセスを通じて蓄積された記録は、生徒の思考のプロセスや価値観の変容を示す、客観的で妥当な「評価材料」となります。もう、通知表の所見を書くために、頭を悩ませる必要はありません。ポートフォリオには、生徒一人ひとりの成長の物語が、生き生きと記録されているのです。
評価への不安が自信に変わるとき、日々の道徳授業は、より創造的で豊かな時間になります。この本が、あなたの道徳科授業に、そして生徒たちの学びに、新しい光を当てる一助となることを、心から願っています。