児童養護施設において、心理職の専門性への期待は高まる一方です。しかし、その専門性ゆえに、彼らが施設内で孤立や葛藤を抱えている現実は、あまり知られていません。本書は、その「支援者の困難」の構造を、学術的なアプローチで深く解明しようとする、私たちの研究成果です。
これは、単なる体験談ではありません。なぜ心理職は独自の文化を持つ施設の中で役割を見出しにくいのか。他職種のスタッフとの連携は、なぜ難しいのか。その根源的な問いに、7人の心理職の「語り」を質的に分析することで迫ります。
『児童養護施設における心理職の役割とその位置づけに関する研究』
7人の心理職の語りから、多職種連携の課題と可能性を探る
「語り」を分析する、質的研究の視点
本書の根幹をなすのは、経験年数1年から10年の心理職7名への詳細なインタビューと、質的研究法「グランデッド・セオリー・アプローチ」による緻密な分析です。これにより、彼らが自身の役割をどのように認識し、困難を乗り越え、専門家としてのアイデンティティを確立していくかのプロセスを、客観的に描き出しています。
真の多職種連携は、精神論ではなく、互いの役割と困難に対する構造的な理解から始まります。この研究は、そのための確かな土台を提供します。
すべての対人支援職と、組織のための研究
本書を読むことで、当事者である心理職は自らの経験を客観視し、キャリアパスを考える上での指針を得られます。また、施設管理者や他職種の専門家は、心理職との連携を改善するための具体的な視点を得ることができるでしょう。
この研究が、児童養護の現場における、より良い協働関係を築くための一助となることを、強く願っています。